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姫子のドタバタバレンタイン♪

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「ソウマ君、これ…」
「えっ、俺に?」
姫子が差し出した綺麗にラッピングされた箱を見て、ソウマの顔が真っ赤に染まる。
「これ、もしかて…えっ」
「うん」
姫子も少し照れながら答える。
(但し義理だけど…)
と心の中で突っ込む。
しかし、知らぬはソウマのみ。
「あ、ありがと」
ソウマは、あさっての方を見ながら姫子のチョコを受け取る。
「じゃ、わたし」
ソウマにチョコをわたし終わった姫子は、あわててどこかにかけて言った。

そんな二人の姿をそっと盗み見ていた影があった。
宮様こと、姫宮千歌音様である。
わかっていたこととはいえ、姫子がソウマにチョコを渡すとこを目の辺りにしてしまい胸を痛めていた。
たまたま姫子の姿を見かけ、お昼どうするのかと声をかけようと追いかけたところに出くわしてしまった惨事
(わたしの姫子が…)
いっそ見なければこのような想いをしないものを
何度もそう思った。
でも、姫子が望むのなら仕方ない
そうあきらめて立ち去ろうとしたところに姫子がどこかにかけていく音が聞こえた。
(まさか、わたしを探しに)
もしそうなら、自分がここにいることを見られてはまずい。
そう思った千歌音は、あわてていつもの場所、薔薇の園へ向かった。

ごそごそっ
「いらっしゃい、姫子」
薔薇に囲まれた穏やかな園の一角から、淡い栗色の髪がのぞくのが見えて、千歌音は何ごともなかったように声をかけた。
「あっ、千歌音ちゃん。よかった」
千歌音を見つけた姫子は、安心したように彼女の名前を呼んだ。
「どうしたの?姫子」
「あのね、あの…」
「何?」
言いにくそうにもじもじしてる姫子を優しく見守りながら、千歌音は彼女の次の言葉を待つ。
「あのぉ、変かもしれないけど、これ」
姫子は、後ろに隠し持っていた箱をそっと千歌音の前に差し出した。
それは、さっき見た同じラッピングの箱。
しかし、それは心持ち大きいように感じた。
「これ…」
千歌音は、不思議なモノを見るようにその箱を見つめた。
バレンタインのチョコは、男女問わず山のように贈られている千歌音である。
女性からチョコを贈られることに違和感を感じるわけはない。
むしろ、普通である。
なら何故、千歌音をこのように戸惑わせているかといえば、このチョコが最愛の姫子から贈られたチョコだからだ。
うれしくないはずがない。
『が』
ソウマにチョコを贈る姫子を目撃した直後である。
まさか、自分がもらえるとは思っていなかった。
「千歌音ちゃん…」
差し出した姫子の方はというと、なかなか受け取ってくれない千歌音に変な子と思われたと思ってだんだん不安になってきていた。
「ごめんなさい、わたし」
あわてて箱をひっこめようとした。
しかし、その手を千歌音の手が掴む。
「姫子」
「えっ」
「わたしに下さるのではなくて?」
千歌音は、誰もが悩殺されそうな宮様スマイルを浮かべながら姫子を見つめた。
「あっ、うん。でも…」
「ごめんなさい、姫子。ちょっと驚いたものだから。わたし、姫子がチョコをくれるとは思っていなかったから」
「そんなこと」
「義理でもうれしいわ」
「義理じゃないよ。千歌音ちゃんが大好きだから、チョコをあげたいなって。嘘じゃないよ、ほんとだよ。」
「ありがとう、姫子」
「うん」
うれしそうに笑う姫子が愛しくて、千歌音も優しく微笑む。
そんな千歌音の綺麗な顔をうっとり見つめながら
(夜が楽しみ♪)
と姫子は思った。

こうして三人三様のバレンタインの夜は更けていく。


by 紫苑 芳
2005/02/15


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