鳴らない電話

初音の連絡を待つ奏子のせつない想い

 
「姉様…」
夜空を見上げながら、奏子は愛しい人にそっと想いを馳せた。
今頃、初音は何をしているだろう。
巣で誰かを抱いているのだろうか?
少しは、自分のことを考えたりしてくれるだろうか?
でも、きっと、自分のことを考えていない…と思った。
もし、考えてくれているのなら、電話が鳴るはずだ。
そして…

『おいで』

ただ、一言の言葉
いつも、いつも…
奏子は、初音のこの一言だけを待っていた。
だけど、今日もその一言はない。
奏子は、そっと自分の部屋の子機に目を向けた。
でも、電話は鳴らない。
こんな心細い想いを奏子がしていることなど、初音は思いもしないのだろう。
それでも奏子は、初音を想う。
愛しい姉様…
今、初音は何をしているだろう。
きっと、他の贄を抱いているのだろう。
連絡がないということは、きっとそういうことに違いない。
微かな嫉妬が、奏子の心に生まれる。
自分は、初音のモノだ。
でも、初音は…
奏子のモノではない。
初音は、誰のモノでもない。
それが、奏子の不安につながっている。
それでも、初音に隷属していられるのなら、初音の傍にずっといられるのなら。
それだけで幸せだと、奏子は思った。
贄でもいい、食べられてもいい…
初音の傍に永遠にいられるのなら
(望むモノは、姉様…)
奏子には、初音しかいない。
奏子は、せつない想いに心を震わせ、両の腕で自分の身体をそっと抱いた。
「姉様…」
言葉に出して呼んでみる。
初音には届かないのはわかっていた。
それでも、呼ばずにはいられなかった。

ツゥルルル…

いきなりの電話のベル。
奏子は、震える手で子機を取った。
「もしもし…」
「奏子?」
「はい…」
「おいで」

プツっ…ツーツーツー

用件だけ言うと、初音の電話は切れてしまった。
それでも、奏子の心は幸せでいっぱいだった。

姉様…

― fin ―


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